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2004.02.27

時計を忘れて森へいこう

『時計を忘れて森へいこう』 光原百合作 東京創元社

 高校生の若杉翠は、校外学習で出かけた森で時計を落としたことをきっかけに、シーク教会の自然解説指導員(レンジャー)、深森護と出会う。森を守り、森林の声を代弁するというレンジャーたちやシーク協会の活動、そしてなによりも護に、翠は惹かれて協会に通うようになる。そこに起きた悲しい出来事を、護は「事実」をつなぎあわせ、ひとつの物語として紡ぎだす。森林浴をした気分になれる1冊。

 シーク協会のモデルは清里の財団法人キープ協会である。清里へは1度しかも1泊だけ行ったことがあるが、このようなプログラムがあることを知らなかった。
 ガールスカウト活動に関わって、一度里山保全のワークキャンプにも参加した。世界中から若者たちが集まり、森を守るために作業をしている姿を見て、感動した。木にかこまれていると、確かに何かを感じることができる。そんな気持ちを思い出させてくれる本だった。

 ミステリ部分の事件は、痛ましいものではあるが、解決には護の言葉が救いとなる。

「そうそう。同じものをみても、見る人によって世界はまったく違った姿に映る、それはどうしようもないことかもしれません。自分の見方を押しつけるのはおこがましいことだともわかっているつもりです。それでもなお、人を不幸にする見方と幸福にする見方があるのに不幸にする見方しか気づかない人がいたら、もう一方の存在だけでも教えるべきじゃないかって気がするんです。そのあとどちらを選ぶかはその人の意思ですけどね。」(46ページ)
 そう、この言葉にあるように、ひとつのことにもいろいろな見方がある。人生は1度しか生きられないけれど、本を読むとたくさんの見方や生き方を知ることができる。だからわたしは本を読むのだと思う。

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2004.02.18

魂をはこぶ船

魂をはこぶ船――幽霊の13の話 オトフリート・プロイスラー作 スズキコージ絵 佐々木田鶴子訳 小峰書店

 プロイスラーの昔話シリーズの3巻。この巻は幽霊のお話が集められている。1巻は宝探しの話で、日本の似たような話と比べてみて興味深かった。2巻は未読。そしてこの幽霊話は、やはり日本とちょっとちがうと思った。
 ときどき怖い話って読みたくなる。なんでだろう。
 スズキコージの絵と、ドイツの絵葉書をコラージュしたという表紙が素敵なシリーズだ。

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2004.02.16

遠い約束

『遠い約束』 光原百合 創元推理文庫

 浪速大学に入学した桜子は、憧れのミステリ研究会に入部する。初めての合宿で遭遇した謎、『消えた指環』。関ミス連の例会で起きた、『「無理」な事件』。昔の級友から届いた暑中見舞いの謎、『忘レナイデ……』。その合間に桜子の大叔父が残した遺言の謎をとく『遠い約束』が挿入された短篇連作集。謎を解くのは、ミステリ研の頼もしい3人の先輩たち。

 すごくよかった。表紙や挿絵は野間美由紀で、これが創元推理文庫?とびっくりしたけど、光原百合の名前は『時計を忘れて森へいこう』で知っていたので、読みたいと思っていたのだ。(こちらもぜひ読まなくては)
 どの作品も読後感もいいし、何か温かい気持ちにさせてくれる。はまった言葉は「天下御免の名探偵ミーハー」。ふふふ、わたしも桜子のように名探偵ミーハーだなぁと思ってしまった。いいなあ、こんなミステリ研があったら、わたしも入りたかった。
 ジーンときたのは、「書くこと」。わたしにとって「書くこと」って何か、もう一度考えたいと思った。そして読むことも。登場人物のひとりがいう。

「人生最後に食べる物は何がいいかって質問があるけど、僕は人生最後に読む本が何かのほうが気になるんですよ。何度も読み返した愛するミステリをもう一度読みながら最期を迎えられたら最高ですね」(103ページ)

 これからいったい何冊の本に出会えるだろう。そして最期に読む本はなんだろう。ラストの手紙には思わず泣いてしまった。

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2004.02.12

気になる本

 今気になっているのが講談社のミステリーランド。すでにはやみねかおると有栖川有栖を娘と息子用ということで買ってしまった。(娘たちはすでに読了。くやしい。)今朝の朝刊の新刊広告には竹本健治の『闇の中の赤い馬』が載っていた。挿絵はスズキコージ。これもほしいなぁ。本代が~。あと山口雅也や法月倫太郎も楽しみ(^^)。あぁ、昨日一気読みしてしまった『遠い約束』(光原百合)の感想も書いておきたいのだけど、今日は時間が取れなかった。また今度。

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2004.02.11

殺意のシナリオ

『殺意のシナリオ』 J・F・バーディン作 宮下嶺夫訳 小学館

 二日酔いで頭はずきずきと痛む上に、手首には深い傷跡があり、包帯もまいてあるけれど、自分で切ったのかどうかも思い出せない。昨夜のことがまったく思い出せないフィリップは、不安になりながらも出社した。オフィスの机のうえには、タイプで打たれた原稿があった。『告白』と題されたその原稿には、フィリップが妻を裏切ったことが書かれていた。書いた覚えもないが、よく日づけをみると、今日起こることらしい。書かれていたことが、現実に起きてきて、フィリップは恐怖にとらわれる。誰かが自分を陥れようとして書いているのだろうか? それとも自分で書いて、書いたことを忘れているのだろうか?

 原作は1947年に書かれたが、アメリカではなかなか認められず、最初はイギリスで出版されたという。タイプ原稿というところが、ちょっと古いと感じるかもしれないが(今だったらやはりパソコン?)、心理的においつめられていくようすは、今読んでもじゅうぶん怖い。その恐怖が最初から最後まで続くところもすごい。
 探偵役の精神分析医ジョージ・マシューズが登場する2作目。1作目は晶文社より近刊だそうだ。3作目は『悪魔にくわれろ青尾蝿』と、すごいタイトル。この3部作が、70年代にイギリスの推理作家・評論家のジュリアン・シモンズによって再評価されたという経緯が新保博久による解説に書かれている。

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2004.02.09

ワニ

ワニ ジャングルの憂鬱 草原の無関心 梨木香歩文 出久根育絵 理論社

 海に近い河口にすむあるワニのお話。
 ワニはいばっているつもりはないが、他の動物からみたら恐怖の対象。そんなワニが唯一の親友だと思っていたのがライオンでした。

 「仲間」ってなんだろう。緑のジャングルと黄金の草原の絵が、物語と呼応しているように迫ってくる。仲間……ナカマ……ナカマといつまでも耳のなかにひびいてくる。ちょうど今の心境とぴったりとあってしまった。

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2004.02.05

G. K. Chesterton

 先日読んだ『マライアおばさん』にでてきた、"Lepanto" by G. K. Chestertonをみつけたので、読んだ。やっぱりむずかしい。よくわからない。主人公はこれを暗誦したのよね。好きな詩で全部おぼえているという設定。チェスタトンは昔、ブラウン神父の短篇をいくつか読んだだけ。ブラウン神父だけでなく、評論や詩などでも活躍していたのね。ダイアナ・ウィン・ジョーンズは、チェスタトンが好きなのかなぁ、『九年目の魔法』
にも"The Man Who Was Thursday"
"The Napoleon of Notting Hill"が出てきた。うう、これを読めばさらに物語を楽しめるのだと思うのだけど、なかなか読めない。今年こそ! 

 詩を暗誦するというと、子どものころ読んだランサムのお話では、よくナンシー姉妹が大おばさまの前でやらされていた場面を思い出す。子どものころそれがピンと来なかったのだけど、イギリスでは一般的にやるのだろうか。子どもたちも国語の教科書の音読の宿題はよくでる。気に入ったお話は暗記してしまうから、そういう感じなのかなぁ。

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2004.02.04

魔法博物館の謎

魔法博物館の謎 ジョン・ベレアーズ作 三辺律子訳 アーティストハウス

 「ルイスと魔法使い教会」シリーズの7作目。実は5、6作目はまだ読んでいない。
 
 ルイスとローズ・リタも中学生。今頭をなやませているのは、数週間後にせまったタレント・ショーで何をやるか。人前で芸を披露しないといけない。ふたりは手品をすることにして、おじさんの知り合いで近くニュー・ゼベダイの町にオープンする魔法博物館を訪れる。そこの書庫で、役に立ちそうな本をさがしていて、ローズ・リタが手にしたのは、古い巻物だった。

 謎が不気味でちょっとどきどきするのが、このシリーズの特徴だけど、もうひとつの読みどころはローズ・リタやルイスの思春期の悩みだろう。中学生になったローズ・リタにとって、映画俳優や歌手に夢中になっている子たちとは、話があわない。そこにつけこまれてしまうのだが、こうした悩みはこの時期誰でも感じることだろう。今でもそうかもしれない。

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2004.02.02

ファンタジービジネスのしかけかた

『ファンタジービジネスのしかけかた』 野上暁+グループM3 講談社+α文庫

 ハリー・ポッターがなぜ、どのように売れたかの分析がおもしろい。ポケモンとの比較はわかりやすく、売れるべくして売れたのだと納得できた。たしかに、あの厚さを読んでいる子どもをみると、ちょっとうれしくなるけど、その先が問題なのだよね。娘はハリポタで自信をつけて、とにかく厚い本を読みたがる。好きな作家を追いかけて読むこともおぼえた。

 わたしも子どものころから、ファンタジーが好きだった。今もやっぱりファンタジーが好き。なぜなんだろうと、最近よく考える。

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