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2005.04.05

人間の存在

死者の書(創元推理文庫 547-1)
ジョナサン・キャロル著・浅羽莢子訳

 トーマス・アビイは大好きな作家、マーシャル・フランスの伝記を書くのが夢だった。とうとう高校の教師を休職、伝記に専念することに決めた。まだ読んでいなかったフランスの著書の初版本をめぐって、サクソニー・ガードナーという女性と知り合う。彼女もまたフランスのファンで、トーマスが伝記を書こうとしていると知ると、協力を申し出る。サクソニーとトーマスは、フランスが晩年をすごし、愛していた町ゲレインに向かう。フランスの娘アンナに伝記の了解を得ようと逗留することになった。しかし、この町はどこかおかしい……。

 不思議な小説だった。ホラーというのもちょっとちがうし、ファンタジーともいいきれない。作家にのめりこみ、伝記を書こうとするトーマスの行動には、本が好きな人なら惹かれるところがあるだろう。架空の作家とはいえ、マーシャル・フランスの著書としてでてくるタイトルもまた興味をそそられる。そしてあっとおどろく結末。

 続いて読んだ本もまた、ジャンル分けがむずかしい。

方舟は冬の国へ(カッパ・ノベルス)
西沢保彦著

 失業してしまった和人は、1か月間、初対面の女性と子ども3人で家族を演じてほしいという仕事をもちかけられる。しかも、監視カメラと盗聴器つきの別荘で結婚10年の仲むつまじい家族を演じろというのだ。報酬は法外なものだった。和人は報酬以上に好奇心にかられてひきうけるが……。

 どこか『死者の書』とにているところがある。神の領域というか、ネタバレになってしまうのでくわしくは書かないけれど、人間の存在について考えさせられた。伝記を書こうとして資料を集め、死んでしまった作家を文章で描こうとするトーマスと、他人の役を演じようとする和人が重なってしまった。どちらもちょっとコンプレックスのある男性が語り手というところが似ているのかしら。こちらは一応「長編本格推理」などと銘打ってあるけれど、ミステリやSFを期待するとちょっとちがうかも。著者ご本人はあとがきで「ファンタジック・ロマンス」といっているが、たしかにロマンス。男のロマンスでしょうか(^^;)。きらいではない。カバーイラスト:駒田寿郎、カバーデザイン:祖父江慎+柳谷志有(cozfish)による本のイラストやデザインもロマンスにふさわしい。

call_me_gedさんへのリンク追加しました。「雑学クイズ」楽しみにしています。

◆◇ ただいまの走行距離 ◇◆

・書く(訳す)           570/2000
・読む(原書)   20ページ    2148/5000
・「英文和訳演習(中級篇)」    16/24

 某クラブでの原書マラソンは終了してしまったので、ちょっと停滞気味。5000ページまではまだまだ遠い。

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