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2008.06.30

目眩? 眩惑?

読破ページ数【40】


『ブラック・ジュース』 マーゴ・ラナガン作 佐田千織訳 河出書房新社(2008.05)
・2006年マイケル・L・プリンツ賞オナーブック
・2005年オーストラリア児童図書賞 Older Readers 部門候補作
・2005年世界幻想文学大賞短編部門短編部門受賞

 これまでに色のついた短編集を3冊だしているマーゴ・ラナガン初の邦訳。短編集第1作が"White Spikes"(1999)、第2作が本書"Black Juice"(2005)、第3作の"Red Spikes" (2006)は2007年オーストラリア児童図書賞 Older Readers 部門を受賞し、2007世界幻想文学大賞コレクション(Collection)部門候補作となってます。

 なんだか状況がわからないまま、語り手にぐっと引き寄せられてしまう。かなりグロテスクな描写もあるけど、不快な読後感ではなく、どこかつきぬけているところが不思議。なんというか足元が不安定になる感じ。目眩がしそうだけどやめられない。最後の謝辞にある作品のできたきっかけがおもしろい。

「沈んでいく姉さんを送る歌」Singing My Sister Down
 刑罰でタール池に沈められる姉を見送る弟が語り手。原書で読んだときは、本当にタール池に沈んでいくのかなあと不安だった。読み間違えているんじゃないかと思って(^^;)。邦訳の表紙の絵にもなっている作品。前にテレビで天然のタール池を見た記憶がよみがえってしまい……。

「わが旦那様」My Lord's Man
 中世ヨーロッパ風の世界で、逃げだした領主の妻を追う旦那さまに従う忠臣が語り手。これも語り手の感情にひきこまれる。

「赤鼻の日」Red Nose Day
 道化師ばかりの町で、道化師を狙撃する男が語り手。状況はなにも説明されていないのだけど、印象にのこる作品。

「愛しいピピット」Sweet Pippit
 象が語り手。飼育係をたすけるために、像たちが脱走する。これが一番わかりやすいかも。ラストの描写が好きだなぁ。

「大勢の家」House of the Many
 人里はなれた集団の中で育ち、文明社会に旅立つ少年が語り手。

「融通のきかない花嫁」Wooden Bride
 花嫁学校の卒業礼拝なのかな。迷子になって遅刻してしまう花嫁さんが語り手。教会が見えているのにたどりつけないいらだたしさにやきもきしてしまう。

「俗世の働き手」Earthly Uses
 初出は『SFマガジン606号』掲載(「地上の働き手」市田泉訳)。天使の造形が印象的。祖父母に育てられた少年が語り手。祖母が死にそうになり祖父に天使をさがしてこいといわれるが、この天使がすさまじい。

「無窮の光」Perpetual Light
 近未来のオーストラリアらしいところが舞台。祖母の葬式にでかける女性が語り手。空気も汚染されていて、外出するのがかなり大変な世界。

「ヨウリンイン」Yowlinin
 ヨウリンインという怪物に脅えている世界。以前襲われたときに生きのこったために差別されている少女が語り手。怪物が……。

「春の儀式」Rite of Spring
 病に倒れた弟に代わって、春をよぶ儀式を執り行なうことになった兄が語り手。儀式の描写が印象的だった。

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2008.06.23

all that jazz

読破ページ数【40】


『キッド・ピストルズの最低の帰還 パンク=マザーグースの事件簿』 山口雅也著 光文社(2008.05)

 やっぱりおもしろい~~。
 パラレルワールドの英国では、探偵士が事件を担当しスコットランド・ヤードの刑事はその助手的存在。キッドは刑事です。
 13年ぶりの復活です。収録作5作のうち2作は1995年に発表され、3作が2007~8年に発表されたもの。キッドたちは歳をとってませんが、パラレル英国でも携帯電話が普及しているところに時の流れを感じました(^^;)。

以下タイトルとモチーフとなっているマザーグースをメモ。

「誰が駒鳥を殺そうが」(Death and Burial of Cock Robin)
 射程距離外から射られた矢で殺されていた不可能犯罪。

「アリバイの泡」(The Wise men of Gotham)
 三つ子のひとりが犯人のはずなのに、監視カメラには常にふたりしか映っていなかった。キッドはどう犯人を確定したか。

「教祖と七人の女房と七袋の中の猫」(As I was going to St.Ives...)
 片側は崖、反対側は海の一本道。両側を見張られていた密室状態の中で、トラックに乗っていたはずの子供たちが消えた。これが一番よかったです。

「鼠が耳をすます時」(Three blind mice! See, how they run...)
 意外な殺害方法。

「超子供たちの安息日」(Monday's child is fair of face...)
 超能力をもつ子供たちを収容する施設で密室殺人。関係者はさまざまな超能力をもつ子供たち。

 これからもぜひつづいてほしいシリーズです。

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2008.06.17

何を見たか

読破ページ数【30】


『鏡の向うに落ちてみよう 有栖川有栖エッセイ集』 有栖川有栖箸 講談社(2008.05)

 久しぶりに読むエッセイ集。いろいろなメディアに書かれたものだけど、追っかけて読むほど熱心な読者でないので、1冊にまとまって読めるのはうれしいです。訪台記がとってもおもしろかったです。おりしも『 ミステリーズ! vol.29』では台湾ミステリが紹介されています。ちょっと読んでみたいかも。「総ルビ復活論」には、そのとおりって思いました。

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2008.06.12

艱難辛苦

読破ページ数【30】


『ぼくの羊をさがして』 ヴァレリー・ハブズ作 片岡しのぶ訳 あすなろ書房(2008.04)

 「ぼく」はボブさんの農場でうまれた牧羊犬のボーダーコリーの子犬。いつか父さんのようにりっぱに羊を追えるようになるのが夢だった。ところがある日落雷から起きた火事で農場は大打撃を受けて、ぼくは売られてしまった。しらない町のペットショップにつれていかれ女の子に買われたが、ぼくは室内犬じゃないんだ! 翌日さっさと逃げだしたけど、ぼくの追う羊はどこにいるんだろう。いつか農場にもどって、ぼくの羊を追うんだ。こうしてぼくの冒険がはじまった。

 放浪をしながら、人間と出会って「ぼく」は、人間と出会うたびにいろいろな名前で呼ばれる。辛い目にもあうし、ひとりぼっちになったこともあったけど、あきらめなければいつか自分の羊に出会えると信じて旅をつづけていく。ジャックと呼ばれるようになるまでのあいだの出来事が、犬の目をとおして描かれている。

「忍耐の帆を張っていれば、はるばる遠くまで旅ができるんだよ」(42ページ)

 ジャックという名前や、バックという犬の話がでてくるところから、ジャック・ロンドンの『野性の呼び声』へのオマージュだと感じた。昨年新訳もでたので、読み比べて見るとおもしろい。
※タイトルからbk1に飛びます。

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2008.06.08

見守る

読破ページ数【30】

どうなっちゃってるの!?クレメンタイン クレメンタイン(1) サラ・ペニーパッカー作 マーラ・フレイジー絵 前沢明枝訳 ほるぷ出版(2008.05)
★2007年ボストングローブ・ホーンブック賞フィクションと詩部門オナーブック

 子供が子供の論理で動いたとき、大人からみるとやっかいなことになるのは、現実には多々あることだ。その行動を子供が読むからおもしろいんでしょうね。
 クレメンタインは小学3年生の女の子。一週間もさんざんだった。ひとつ年上で仲良しのマーガレットの髪を切るのを手伝ってあげたら校長室に呼ばれるし、校長室でまっているあいだ電話にでてあげたら、嫌な顔された。もっと集中しなさいっていわれるけど、クレメンタインとしては、大人のほうが自分の話を聞いてくれないと思う。

 元気いっぱいのクレメンタインが、ひきおこす騒動は、親から見るとやれやれだけど、お父さんもお母さんも愛情いっぱいで見守ってます。うちの子も自分で髪切っちゃったことあったなあと思いつつ、ゆっくりと見守るまわりの大人たちの姿を自分とくらべて落ち込んでしまいます……。

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2008.06.03

5月に読んだ本

読破ページ数【30】

★絵本

とっても いいひ ケビン・ヘンクスさく いしいむつみやく BL出版(2008.02)
こそこそこそっ、かくれよう! マグリーリさんとさむがりウサギ カンダス・フレミングぶん G・ブライアン・カラスえ いしづちひろやく BL出版(2008.01)
チャーリーのどうぶつえん きみだあれ? マーカス・フィスター作 那須田淳訳 講談社(2008.04)
ちいさな たからもの アンドレ・ダーハン作 角田光代訳 学習研究社(2008.04)
かけ算まほうつかい 算数がすきになる絵本3 ロリーン・リーディ作 福本友美子訳 大月書店(2008.03)
分数だいすき 算数がすきになる絵本4 ロリーン・リーディ作 福本友美子訳 大月書店(2008.03)

★読み物

完全恋愛 牧薩次著 マガジンハウス(2008.01)
教会の悪魔 ポール・ドハティ作 和爾桃子訳 早川書房(2008.04)
ホーミニ・リッジ学校の奇跡! リチャード・ペック作 斎藤倫子訳 東京創元社(2008.04)
霧の日にはラノンが視える 縞田理理作 新書館 ウィングス文庫(2003.07)
闇の聖杯、光の剣 北斗学園七不思議2 篠田真由美作 理論社(2008.04)
バレエなんて、きらい ジェニファー・リチャード・ジェイコブソン作 武富博子訳 講談社(2008.03)
断章のグリムII ヘンゼルとグレーテル 甲田学人作 メディアワークス 電撃文庫(2006.07)
恋のドレスとつぼみの淑女 青木祐子作 集英社 コバルト文庫(2006.01)
身代わり伯爵の冒険 清家未森作 角川書店 角川ビーンズ文庫(2007.03)
身代わり伯爵の挑戦 清家未森作 角川書店 角川ビーンズ文庫(2007.12)

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