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2008.09.20

大人にみえないもの

読破ページ数【20】

 

『人くい鬼モーリス』松尾由美作 理論社(2008.06)

 作者のあとがきによるとMaurice Sendak の"Where The Wild Things Are"(邦訳は『かいじゅうたちのいるところ』)へのオマージュとのこと。そう聞くと読まずにはいられない。モーリスはもちろんモーリス・センダックの「モーリス」から登場人物がつけた名前。

 高校2年生の村尾信乃は、夏休みにアルバイトで優雅な避暑地にやってきた。ひとくせある小学4年生の女の子の家庭教師をするのだ。応募してきた子たちはみんな1日で帰されてしまったという。その女の子、芽理沙はとてもかわいい子だったが、どこかさびしげで大人っぽかった。信乃はどうやら気にいってもらえたようだった。しかしその晩あるものをみせられる。大きな黄色い目にさけた口。芽理沙は「モーリス」だと紹介した。大人には見えないのだという。世話をするのに協力してもらえる年長者をさがしての家庭教師募集だったのだ。
 信乃はこのままアルバイトをひきうけるべきか困惑してしまう。そんななか、手違いでやってきた雑誌記者が、展望台から落ちて死んでしまった。そしてその死体が消える。

「『人くい鬼』の『く』はひらがなだから気をつけてね。漢字の『人食い鬼』じゃなく。そのちがいは、生きている人間は絶対に食べないということ」 49ページより

 この「生きている人間は絶対に食べない」モーリスの存在を知っているのは、芽理沙と信乃のふたりだけ。転落事故のはずが、モーリスのある習性のために殺人事件になってしまいそうになり、ふたりは何とかしなければと考える。ちょっとファンタジー的な要素のはいったミステリだ。

 この「ミステリYA!」シリーズは、中高生が読んでもおもしろいのだろうけど、青春がはるかかなたに行ってしまったわたしのような者が読むとすごく郷愁をかきたてられる(^^;)。
 旅をして帰ってくるお話だが、帰ってきたときは、当たり前だけど行く前とはちがうだなぁと。大人になるって、いろんなものをなくしてしまうことだけど、それでもやっぱり子どものままではいられない。そんなことをうだうだと考えてしまう。
 

★「ミステリYA!」その他の作品の感想
オフェーリアの物語
雨の恐竜
ルビアンの秘密

★松尾由美さん読了本感想
安楽椅子探偵アーチー
オランダ水牛の謎

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