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2008.11.18

星火燎原

読破ページ数【20】


『パワー  西のはての年代記 III』 アーシュラ・K・ル=グウィン作 谷垣暁美 河出書房新社(2008.08)
・2007年度ローカス賞ヤングアダルト書籍部門ファイナリスト

『ギフト』では北方の高地を舞台にし、『ヴォイス』では南方の都市アンサルが舞台だった。この『パワー』ではその中間に位置する都市エトラから物語ははじまる。
 主人公のガヴィアは幼いころ姉とともに攫われてきて、エトラでも裕福なアルカ家の奴隷として育った。アルカ家では奴隷にも一族の子供たちとともに教育を受けさせていた。ガヴィアは一度聞いたり読んだりした物語や詩を覚えてしまう優れた記憶力をもっていた。もうひとつガヴィアは「思い出し」という力があった。幻(ビジョン)を見るのだが、それが後日本当に起こるのだ。自分たちの出身地水郷にはよくある力だと知っている姉は、ぜったいにその幻のことを他人に話してはいけないと言いきかせていた。
 しかし大きくなるにつれ、さまざまな不公平さに気がついていき、ある日悲劇が起こる。それに耐えられなかったガヴィアはエトラを出て放浪する。

まして、シドユーの村での生活は、複雑な構造と精巧なしくみをもっている。それは、それぞれに要求水準の高い四つの要素――人間関係・選択・義務・決まりが織りなすタピストリーだ。シドユーの一員として暮らすことは、エトラ人として暮らすことと同じくらい複雑で、繊細さを要する仕事だ。社会の要求に合わせてきちんと暮らすのは、おそらく同じくらい難しいと思う。(332ページより引用)

 ガヴィアは森で放浪していた男に助けられ、逃亡奴隷たちが作っている村があると聞いて、そこへ行く。つぎに故郷の水郷をめざし、さまざまな社会を知っていく。新しい社会にはいるたびに、それまでの経験があまりにも役にたたないことを知るのだ。ガヴィアの旅を通して自由の意味や社会で生きる意味、言葉をもつことの意味を考えさせられる。いま自分がどういう社会で、どういう立場で生きているのかしっかり考えろとせまられているようだった。
 このガヴィアを導くのが『ギフト』にでてきたオレックの詩だ。『ギフト』『ヴォイス』で語られたことと響きあいながらガヴィアは自分がもつ力の生かし方を考えていく。いまこの物語に出会えたことを、これからじっくり考えたいと思う。

◆アーシュラ・K・ル=グウィン読了本感想
ヴォイス 西のはての年代記II』

ギフト 西のはての年代記I』

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