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2010.09.09

正義の代償

『わたしは、わたし』ジャクリーン・ウッドソン作 さくまゆみこ訳 鈴木出版(2010.07)

★2002年全米図書賞最終候補作

 白人の警察官が、黒人の少年を射殺する事件が起きた。それを目撃した黒人の警官は、少年はただ手をあげただけで射殺はまちがいだと主張する。その証言をするかどうかで悩むうちに、家には脅迫電話がかかり、銃弾が打ち込まれ、家族も追いこまれていく。黒人だから殺されてしまった少年に自分の娘をかさねて、証言すると決心した父親は、「証人保護プログラム」をうけ、一家で名前も家も友人たちも、すべてをすてて、新しい土地で生活することになる。13歳と12歳の娘たちは、新しい生活に納得できない。父親はうつ状態になり、母親は宗教に救いをもとめ、家族の心もばらばらになっていく。

 警官として、誇りをもって仕事をしてきたお父さん。けれど正義をつらぬいた結果、それまでのすべてを失った新しい生活に希望を見出せず、うつ状態になってしまうのです。教師をしてたお母さんは、宗教に救いを求めます。娘たちはそれを冷やかに見ています。娘たちにとって宗教は救いにはなりませんでした。家族全員、お父さんがしたことは正しいとわかっていても、なぜ自分たちがすべてを失わなければならないのか、なぜ目撃したのがお父さんだったのだろうと、思い悩みます。

 お父さんの「どっちを選んでも大まちがいなんだからな」という言葉が、ずっとつきまといます。ほんとうに難しい問題で、もし自分だったらと思うとそこで思考が停止してしまいます。それでも選んだことを後悔しないためには、自分自身が何とかしなければならないのと伝わってきました。

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