ヤングアダルト

2008.11.11

畏れ

読破ページ数【20】

『ガンジス・レッド、悪魔の手と呼ばれしもの』 ディーン・ヴィンセント・カーター作 原田勝訳 あすなろ書房(2008.08)

 こ、こわかった~。こんなにこわかったのはわたし的には『天使の囀り』を読んで以来だと思う。冒頭からううう、ってなったけど、こわいもの見たさというか、読みはじめたら今度は途中でやめたらもっと怖くなりそうで、最後まで読んでしまった。

 科学雑誌『ミッシング・リンク』の記者アシュリー・リーヴズのもとに一通の手紙が届く。「ガンジス・レッド」という珍しい生物を所有している。興味があるなら湖水地方の湖に浮かぶ島にきてほしい、というものだった。直感で本物だと思ったリーヴズは、ロンドンから電車を乗りついでその島にでかけた。島には手紙の主、マザーがひとりで住んでいるという。天候の悪化をおしてボートで島に渡ったものの、岩にぶつかりボートは粉々になり携帯電話も水につかってしまう。やむなくマザーの家で一晩とまることになった。

 ガンジス・レッドの正体、マザーの怪しげな行動、嵐の中の孤島という舞台にリーヴズとともに引き込まれていく。

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2008.09.30

ひとりで生きる

読破ページ数【15】

『エノーラ・ホームズの事件簿 ~ふたつの顔を持つ令嬢~』ナンシー・スプリンガ-作 杉田七重訳 小学館(2008.07)

 シャーロック・ホームズの妹(!)エノーラを主人公にしたシリーズ2作目です。

 家を出て、ロンドンでひとり暮らしをはじめて半年。表向きは偽名をつかって「探し屋」(架空の存在)の秘書として暮らし、夜は貧しい人に施しをする〈シスター〉として町にでるエノーラ。ある日「探し屋」をたずねてきたのはワトソン博士だった。その依頼はホームズの妹のエノーラを見つけて欲しいとのこと。シャーロックが動揺していると聞いて、うしろめたく感じるものの、ワトソン博士から準男爵令嬢の失踪の話を聞きつけた。エノーラはさっそく令嬢の探索にのりだす。

 エノーラの生活ぶりはなかなか大変ですが、つらくても自分の決めた道を自分で歩くためにがんばってます。読みどころはシャーロック・ホームズをだしぬいてあのベーカー街221Bの下宿にしのびこむところでしょう。電車の中だったにもかかわらず、にやけてしまいました。

 現在原書は4巻まででています。がんばれ! エノーラ!
The Case of the Bizarre Bouquets (Enola Holmes Mystery)
The Case of the Peculiar Pink Fan (Enola Holmes Mystery)

『エノーラ・ホームズの事件簿 ~消えた公爵家の子息~』の感想

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2008.09.25

家族の絆

読破ページ数【20】

『消せない炎』ジャック・ヒギンズ&ジャスティン・リチャーズ作 田口俊樹訳 理論社(2008.07)

 生き残ること――それがすべてだ。(299ページより)

 ジャック・ヒギンズ初のYA小説です。

 15歳のジェイドとリッチは双子の姉弟。母親と3人で何年もニューヨークで暮らしていた。イギリスのマンチェスターに帰ってきた直後に、交通事故で母親が死んでしまう。ほかに身よりはなくふたりは途方にくれた。ところが母の葬儀に父だというが現れジョン・チャンスと名乗る。そしてふたりをロンドンにつれていった。父親のアパートは殺風景で、電話には妙な装置がついていて謎めいた行動をしている。仕事に何をしているのかも話してくれないうえに、突然父親だといわれても急にうちとけられるはずもなく、ふたりを男女別々の寄宿学校にいれようとしていることを知り、険悪なムード。ふたりはあやしげな電話をうけて出かけた父を尾行することにした。しかし目の前で銃をもった男たちに父は拉致されてしまった。
 警察にかけこむが、「ジョン・チャンス」などという人物は存在しないととりあってくれない。いったい「父さん」は何者なのか。そしてふたりに接触してくる人物たちは敵か味方か!

 姉弟スパイといえば「スパイキッズ」、ティーンエイジャーのスパイといったら「女王陛下の少年スパイ!アレックス」シリーズを思い出す。アレックスは知らなかったとはいえ、叔父さんから英才教育を受けていたわけだし、秘密兵器も作ってもらえたけど、この姉弟は15年間父親の存在すらも知らなかったところに、いきなり陰謀に巻き込まれてしまった。リッチは読書好きな理論派、ジェイドは身体を動かすのが好きな行動派。このふたりが双子らしく息の合ったコンビネーションと、携帯電話を駆使して、父親救出という難局に立ち向かっていく。その危さにぐいぐいと引き込まれてしまう。インターネットカフェで情報を検索したり、ipodでメッセージを聞いたりと、生活面ではまったく日本と同じ。最後の携帯電話の使い方はなかなかおもしろかった。一気に読めてすかっとする冒険小説。
 それにしてもお父さんがかっこいいよ。お父さんの過去話も読んでみたいなぁ。
 3人のこれからが気になるし、これだけで終わるのはもったいないと思ったら、シリーズ化されているようです。続編は"Death Run"とのこと。

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2008.06.30

目眩? 眩惑?

読破ページ数【40】


『ブラック・ジュース』 マーゴ・ラナガン作 佐田千織訳 河出書房新社(2008.05)
・2006年マイケル・L・プリンツ賞オナーブック
・2005年オーストラリア児童図書賞 Older Readers 部門候補作
・2005年世界幻想文学大賞短編部門短編部門受賞

 これまでに色のついた短編集を3冊だしているマーゴ・ラナガン初の邦訳。短編集第1作が"White Spikes"(1999)、第2作が本書"Black Juice"(2005)、第3作の"Red Spikes" (2006)は2007年オーストラリア児童図書賞 Older Readers 部門を受賞し、2007世界幻想文学大賞コレクション(Collection)部門候補作となってます。

 なんだか状況がわからないまま、語り手にぐっと引き寄せられてしまう。かなりグロテスクな描写もあるけど、不快な読後感ではなく、どこかつきぬけているところが不思議。なんというか足元が不安定になる感じ。目眩がしそうだけどやめられない。最後の謝辞にある作品のできたきっかけがおもしろい。

「沈んでいく姉さんを送る歌」Singing My Sister Down
 刑罰でタール池に沈められる姉を見送る弟が語り手。原書で読んだときは、本当にタール池に沈んでいくのかなあと不安だった。読み間違えているんじゃないかと思って(^^;)。邦訳の表紙の絵にもなっている作品。前にテレビで天然のタール池を見た記憶がよみがえってしまい……。

「わが旦那様」My Lord's Man
 中世ヨーロッパ風の世界で、逃げだした領主の妻を追う旦那さまに従う忠臣が語り手。これも語り手の感情にひきこまれる。

「赤鼻の日」Red Nose Day
 道化師ばかりの町で、道化師を狙撃する男が語り手。状況はなにも説明されていないのだけど、印象にのこる作品。

「愛しいピピット」Sweet Pippit
 象が語り手。飼育係をたすけるために、像たちが脱走する。これが一番わかりやすいかも。ラストの描写が好きだなぁ。

「大勢の家」House of the Many
 人里はなれた集団の中で育ち、文明社会に旅立つ少年が語り手。

「融通のきかない花嫁」Wooden Bride
 花嫁学校の卒業礼拝なのかな。迷子になって遅刻してしまう花嫁さんが語り手。教会が見えているのにたどりつけないいらだたしさにやきもきしてしまう。

「俗世の働き手」Earthly Uses
 初出は『SFマガジン606号』掲載(「地上の働き手」市田泉訳)。天使の造形が印象的。祖父母に育てられた少年が語り手。祖母が死にそうになり祖父に天使をさがしてこいといわれるが、この天使がすさまじい。

「無窮の光」Perpetual Light
 近未来のオーストラリアらしいところが舞台。祖母の葬式にでかける女性が語り手。空気も汚染されていて、外出するのがかなり大変な世界。

「ヨウリンイン」Yowlinin
 ヨウリンインという怪物に脅えている世界。以前襲われたときに生きのこったために差別されている少女が語り手。怪物が……。

「春の儀式」Rite of Spring
 病に倒れた弟に代わって、春をよぶ儀式を執り行なうことになった兄が語り手。儀式の描写が印象的だった。

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2008.03.31

居場所をさがして

読破ページ数【30】

ミミズクと夜の王 紅玉いづき作 メディアワークス 電撃文庫(2007.02)

 ミミズクと名乗る少女が、魔物がいるという森にはいってきた。ひたいには焼き印がおされ、両方の手足は鎖でしばられている。魔物に自分を食べてもらおうとやってきたのだった。

 最初は読めるかな~と思ったけど、物語が動きはじめてからぐいぐい引き込まれてしまった。おとぎ話のような物語だった。久しぶりによけいなこと考えないで、お話にどっぷりとはまって読めて、おもしろかった。

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2007.11.10

雲外蒼天

読破ページ数【60】

 ナチス政権下のドイツが舞台。語り手は死神。予想どおり明るい話ではないのだけど、ユーモラスな死神の語り口で、最後はあたたかな気持ちに。今年一番泣きました。もっと早く読めばよかった。

 リーゼルが最初に盗んだのは、弟が埋葬された墓地で。字は読めなかったが、弟を思い出す何かがほしかったのだ。そのあと里子にだされ、毎晩悪夢にうなされる。そんなとき新しい父、ハンスは、文字を教える。そこからリーゼルの世界はひろがっていく。そして節目節目でリーゼルは本を盗む。飢えてもいるから食べ物も盗むが、リーゼルが生きていくためには本も同じくらい大切だったのだ。

 空襲で防空壕に逃げたとき、パニックになった人々に本を読み聞かせて落ち着かせる場面は圧巻です。

 ああ、うまくまとまらない。いろいろとやらなきゃいけないことがたてこんでいてどこから手をつけていいやら。とにかくひとつ終わったので、次いきます。

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2007.05.12

砲烟弾雨

読破ページ数【20】


桜庭一樹著 富士見ミステリー文庫(2004.11)

 ライトノベル・レーベルです、どんな感じかなと思って読んだのですが、なかなか面白かったです。ぜんぜん似てはいないのですが、メルヴィン・バージェス『ダンデライオン』を読んだときの衝撃を思い出しました。

「子供はみんな兵士で、この世は生き残りゲームで。そして。」という言葉が重いです。わたしはといえば、もう大人になっていてよかった、と言い切れるのか……。『ダンデライオン』を読んだときもそう思ったから、思い出したのかもしれません。

 今年の3月には単行本にもなってます。

 大人も手にとりやすくなるのかな。

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2006.07.10

思春期

読破ページ数【120】

ちいさな天使とデンジャラス・パイ
ジョーダン・ソーネンブリック著 / 池内 恵訳

 スティーブンは13歳。ドラムが好きで、オール・シティ・高校生・ジャズバンドのドラマーに選ばれ、練習に励んでいる。ところが、5歳の弟ジェフリーが白血病の宣告を受けてから、生活も家族も一変してしまった。一時間半はなれたフィラデルフィアの病院に通うため、母は教師の仕事をやめる。父は殻にとじこもり、スティーブンは、両親から見放された思いと、弟が死んでしまうかもしれない恐怖で落ち込んでいく。そこから、教師や友だちの力をかりながら、成長していく。もう泣き所満載で、最後の20ページは涙がとまりませんでした。

 中でもわたしに突き刺さってきたのは、「ぼくは突然、気づいた。ぼくが病気になっても、母さんはやっぱり同じようにしてくれるだろう。」というスティーブンの言葉。

 この物語のように、癌になってしまうのは、究極の事態だと思うけど、そこまでいかなくても、きょうだいがいるというのは、当人にとっても親にとっても、たいへんなことなのだとあらためて思ったわけです。きょうだいって不思議です。どうしても、問題が目に見えないと放っておいたほうがいいのかなと思ってしまうけど、いくつになっても甘えたいときはあるはず。息子はあまり家では話さないほうだったので、放っておいたけど、結構苦労していたということを、中学校の卒業前に、友だちのお母さんから聞いてびっくりしたことがありました。いま娘は、まともにわたしに不満をぶつけてくるので、うっとおしいとときどき思ってしまったことを、この本を読んで反省しました。と同時にやっぱり息子も苦労していたんだと思いいたったわけです。わたし自身長女で、弟や妹優先で放っておかれたときに、むかっときたことがあったはずなのに、あのころの記憶がまったくないのが不思議なくらい。中学生のころは、自分自身しか見えないところから、いろいろな人間がいることに気がついていく時期なのだなと思いました。

◆◇ ただいまの走行距離 ◇◆

・訳す(書く)       14枚 1088/2000
・「英文和訳演習(中級篇)」    16/24

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2006.03.28

スウィートネス

読破ページ数【10】

 月刊誌「小説すばる」に掲載された、アンジェラ・ジョンソンの短編。わたしからみたスウィートネスという少女の姿が胸にせまってくる。ジョンソンの小説は"The First Part Last"と"Heaven"を読んだ。どちらも涙ぽろぽろ流して読んだ。邦訳は『クール・ムーンライト』が出ている。まだ読んでいないが、もっと邦訳されるといいな。作品リストはやまねこ翻訳クラブ資料室にある。

◆◇ ただいまの走行距離 ◇◆

・訳す(書く)       3枚  760/2000
・「英文和訳演習(中級篇)」    16/24

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2006.01.14

グッバイ、ホワイトホース

読破ページ数【10】

グッバイ、ホワイトホース
シンシア・D・グラント著 / 金原 瑞人訳 / 圷 香織訳

 16歳のレイナは、麻薬中毒の母と折り合いが悪く家を飛び出し、ホームレス状態で学校に通っている。恋人のサニーもやはり家を出ている。サニーはドラッグをやめられず、ふたりは恐喝や窃盗を繰り返している。
 学校のジョンソン先生は、そんなレイナに詩や文章の才能をみいだし、気にかけていた。しかし、この先生も、大きな心の傷をかかえていたのだった。
 麻薬、売春、妊娠、虐待……。現代の少年少女のリアルな描写は、メルヴィン・バージェスの『ダンデライオン』を思い出させる。
 本書は、レイナとジョンソン先生の一人称で交互に語られていく。そして途中にはさまれる、レイナの書いた文章には、心を揺さぶられた。レイナとジョンソン先生の出会いは、残酷であるともいえる。精一杯悩みながらも、ふたりが出した結論に希望が見えてほっとした。
 並行して『シュクラーンぼくの友だち』を読んだ。こちらはイスラエルに移民してきた少年とアラブ人の少年の友情を描いたもの。紛争地域で、テロの恐怖にさらされながら育つ子どもたちと、生きる気力をみいだせずにドラッグにおぼれていく子どもたち。この悪循環を断ち切るのに、どんな社会を作っていけばいいのだろうと考えさせられた。


◆◇ ただいまの走行距離 ◇◆

・訳す(書く)      5枚   709/2000
・「英文和訳演習(中級篇)」    16/24

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