ファンタジー

2010.05.02

銀のらせんをたどれば

 "The Game" の邦訳。感想書いたと思っていたけどみあたらない。

 両親がいないハレーは、厳しい祖母といつも忙しくしている祖父のもとで暮らしている。あることで祖母の怒りをかったハレーは、アイルランドのおばの家にいくことになった。そこにはこれまで会ったことがなかったおばやいとこたちがいた。いとこたちはある〈ゲーム〉を楽しんでいて、ハレーも仲間にいれてもらう。それは〈神話層〉から物語にでてくる小物をとってくるというゲームで、たちまちハレーも夢中になっていた。しかし、それはジュターおじさんに禁じられた遊びで、とうとうみんなで〈神話層〉に出入りしたいたことを知られてしまい、ハレーは逃げることになる。

 ダイアナ・ウィン・ジョーンズとしては、短いお話ですが、「地球で生み出される、あらゆる物語や理論や信仰、伝説、神話、希望などでできている」という〈神話層〉の描写が美しくて、どこまでも探検したくなります。文字通りいろいろな物語、理論、伝説がちりばめられていて、そうした原典も読みたくなります。メインはギリシア神話で「パーシー・ジャクソン」シリーズのあれこれも思い浮かべながら読みました。

ダイアナ・ウィン・ジョーンズ読了本感想

◆「パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々」シリーズ感想
盗まれた雷撃
魔海の冒険
タイタンの呪い
迷宮の戦い
最後の神

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2010.02.06

パーシー・ジャクソン

 ★シリーズものにつき既刊のネタバレがあります。★

◆「パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々」シリーズ感想
盗まれた雷撃
魔海の冒険
タイタンの呪い
迷宮の戦い

『パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々 5 最後の神』
リック・リオーダン作 金原瑞人・小林みき訳 ほるぷ出版(2009.12)

 大予言がつげているパーシーの16歳の誕生日まであと一週間。クロノスはタイタン族の怪物テュポンを目覚めさせ、みずから軍を率いてニューヨークにせまっていた。テュポンとの戦いにオリンポス山を離れた神々。ポセイドンも海の宮殿の守るため動けず、ハデスは戦うことを拒む。神々のいなくなったオリンポス山を守ろうと、パーシーたちハーフ訓練生はマンハッタンに集結。そこに圧倒的な数の怪物たちを率いるクロノス軍がせまる。
 最後の神とは誰か。大予言はどのように成就するのか。スリリングなファンタジーの最終巻。

これまでアメリカ横断の冒険をつづけてきたパーシーだが、最後の決戦の舞台はマンハッタン。怪物も神々も総出演で、最後まで一気に読ませる。仲間との死別や裏切りを乗り越え、パーシー、アナベス、レイチェルがそれぞれの選択をしていく。2巻で親子関係が気になったところだが、最終巻も親子関係奥が深かった。

 1巻の映画は2月26日から公開です。予告編みるとなかなか楽しそうです。
映画公式サイト

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2009.11.16

ぜひ続編を~

『コブの怪しい魔法使い』 シャンナ・スウェンドソン作 今泉敦子訳 東京創元社(創元推理文庫)(2009.02)

※シリーズものにつき既刊のネタバレ含みます。


◆「(株)魔法製作所」シリーズ感想
ニューヨークの魔法使い
赤い靴の誘惑
おせっかいなゴッドマザー

 オーウェンの足手まといになりたくないと、故郷テキサスの田舎町コブに帰ったケイティ。町中の人はみな知り合いだし、実家の店では頼りにされるしで、平穏なりに忙しく過ごしていた。でも考えるのはやっぱりオーウェンのこと。そんなとき町に魔法の気配が。会社に報告すると調査にやってきたのはオーウェン!

 今回も楽しかった~。ケイティの家族も濃いです。3人の兄たちにその連れ合い、お母さんは相変わらずだし、さらに強力なおばあちゃんまで。そしてケイティの家族にも秘密があったのでした。オーウェンとの再会からラストまではらはらしながら読みました。そしてお父さん最高! そういえば「図書館戦争」シリーズの笠原郁のお父さんとにてるなぁ。そういえば郁もお兄さんのいる妹だったけ。

 原作は5巻出版の目処がたっていないようですが、ぜひぜひ5巻を~~。

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2009.10.10

伝説の生まれるところ

勇者の谷』 ジョナサン・ストラウド作 金原瑞人・松山美保訳 理論社(2009.08)

「勇者の谷」。そこにはかつて夜になると人間や家畜を襲うトローという怪物がいた。その怪物たち
をたおし、安全な谷にしたのが12人の勇者たち。その筆頭にたって戦ったのが勇者スヴェンだった。
勇者たちはいまもトローがいるといわれる荒野と谷の境界のケルンの下で剣をもって眠り、トローの
侵入をふせいでいる。
 主人公のハリは、スヴェンの末裔スヴェンソン家の次男。勇者スヴェンにあこがれているのだが、
いまは平和な時代で争い事も話し合いで解決する。ハリはいまの生活に不満をもっていた。そんなハ
リを理解してくれるのは叔父のブローディアだけだった。
 ハリが14歳になった年の秋の集いの日。ハリがしかけたいたずらがきっかけとなり、ブローディア
がハコンソン家の者に殺されてしまう。裁判での決着をもとめる父をはじめとする家族にいらだつハ
リは、ひとりで復讐をとげようと旅立った。
 スヴェンが第一の勇者だと信じてきたハリは、はじめて領地からでてほかの勇者の末裔たちと出会
い途方にくれる。それぞれの家で、自分たちの父祖こそが第一の勇者である話が伝わっているのだ。
勇者の伝説に疑問をもちながら旅をし、ついに叔父の仇のもとにたどりついたハリは思いがけない真
実を知る。
 とにかくハリは“勇者”のイメージとはほど遠く、口も悪いし不細工で背も低い。やることがすべ
て裏目にでていく。他人の剣をとっても、長すぎてふるえない、なさけない“勇者”なのだ。そんな
ハリを叱咤激励していくのが、勝気なアリネソン家の娘アウド。伝説にとらわれるハリと、家の安寧
のために嫁がされることに反発し伝説を否定するアウドは、やがて伝説の真実にいきあたる。
 ハリがあがけばあがくほど事態が悪化していくが、ハリの口の悪さもかなりのもので、読んでいて
もおもわず「だまってろ」といいたくなるほど。でも、ハリとアウドにはいつか必要となる旅だった
のだろうと思う。読んでいて次々と予想を裏切られていく展開に、びっくりしながら読み終えた。

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2009.09.28

たりないもの

『キャットと魔法の卵』ダイアナ・ウィン・ジョーンズ作 田中薫子訳 徳間書店(2009.08)

 クレストマンシー・シリーズ最新作。『魔女とくらせば』のキャットのその後を知りたいという読者の声に応えて書かれたということで、『魔女~』から約一年後のお話です。クレストマンシー城の生活にも慣れてきたキャットですが、一番年少のために子ども扱いされることにちょっと不満。
 お城の近隣の村では昔からクレストマンシーに隠れて魔法を使う一族がありました。その一族のマリアンはせっかくの夏休みをばば様にふりまわされて不満がたまっていました。やはり年少の魔女ということで、大人たちは真剣に自分のいうことを聞いてくれないのです。ある日キャットはマリアンと出会い、彼女が大きな魔力をもっていることを見抜きます。ふたりはうちとけて、ばば様の家の屋根裏部屋に隠されていた卵をみつけます。マリアンから卵を譲り受けたキャットは、苦心の末その卵を孵しました。そこから出てきたのは……。

 キャット大活躍で、楽しいです。子ども扱いされて、なかなか自分たちの言うことを信じてもらえないキャットとマリアンのいらだたしさがうまく描かれています。
 今回新たに「地気術」という力がでてきます。自然の力をうまく使うと魔法も強力になるみたいです。その他にもいろいろな要素がつまっていて、やっぱり奥が深いです。今回は卵の生き物とともに自然の描写がすてきだなぁと思いました。今年は5月に『魔法の館にやとわれて』("Conrad's Fate")もでています。現クレストマンシーであるクリストファーの少年時代を描いていて、こちらも楽しめます。

ダイアナ・ウィン・ジョーンズ感想

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2009.01.17

生者と死者と

読破ページ数【50】


『パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々4 迷宮の戦い』 リック・リオーダン作 金原瑞人・小林みき訳 ほるぷ出版(2008.12)

 パーシーはハーフ訓練所での3度めの夏をむかえようとしていた。またまた騒ぎが起きてしまい、訓練所にやってきたパーシー。しかしそこでもなにやら不穏な雰囲気がただよう。訓練所に迷宮の出入口があることがわかったのだ。クレタ島にあった迷宮はいまではアメリカ大陸の地下にあり、さらに成長をつづけているという。道案内がなければ無事にでてこられない。しかしこの出入口から攻撃されたら、訓練所はひとたまりもない。敵となったルークよりはやく「アリアドネの糸玉」をみつけ、迷宮をつくったダイダロスに協力をもとめなけれならない。そこでパーシーたちは迷宮にはいっていく。

 迷宮をとおってまたまたアメリカ横断の旅にでます。あの神の復活が感じられるようになり、神々、ハーフたち、それぞれに思惑もあり、パーシーも気が抜けない。みなそれぞれ決断をせまられる場面があります。生と死、自然についていろいろと考えさせられました。

◆「パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々」シリーズ感想
盗まれた雷撃
魔海の冒険
タイタンの呪い

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2008.11.18

星火燎原

読破ページ数【20】


『パワー  西のはての年代記 III』 アーシュラ・K・ル=グウィン作 谷垣暁美 河出書房新社(2008.08)
・2007年度ローカス賞ヤングアダルト書籍部門ファイナリスト

『ギフト』では北方の高地を舞台にし、『ヴォイス』では南方の都市アンサルが舞台だった。この『パワー』ではその中間に位置する都市エトラから物語ははじまる。
 主人公のガヴィアは幼いころ姉とともに攫われてきて、エトラでも裕福なアルカ家の奴隷として育った。アルカ家では奴隷にも一族の子供たちとともに教育を受けさせていた。ガヴィアは一度聞いたり読んだりした物語や詩を覚えてしまう優れた記憶力をもっていた。もうひとつガヴィアは「思い出し」という力があった。幻(ビジョン)を見るのだが、それが後日本当に起こるのだ。自分たちの出身地水郷にはよくある力だと知っている姉は、ぜったいにその幻のことを他人に話してはいけないと言いきかせていた。
 しかし大きくなるにつれ、さまざまな不公平さに気がついていき、ある日悲劇が起こる。それに耐えられなかったガヴィアはエトラを出て放浪する。

まして、シドユーの村での生活は、複雑な構造と精巧なしくみをもっている。それは、それぞれに要求水準の高い四つの要素――人間関係・選択・義務・決まりが織りなすタピストリーだ。シドユーの一員として暮らすことは、エトラ人として暮らすことと同じくらい複雑で、繊細さを要する仕事だ。社会の要求に合わせてきちんと暮らすのは、おそらく同じくらい難しいと思う。(332ページより引用)

 ガヴィアは森で放浪していた男に助けられ、逃亡奴隷たちが作っている村があると聞いて、そこへ行く。つぎに故郷の水郷をめざし、さまざまな社会を知っていく。新しい社会にはいるたびに、それまでの経験があまりにも役にたたないことを知るのだ。ガヴィアの旅を通して自由の意味や社会で生きる意味、言葉をもつことの意味を考えさせられる。いま自分がどういう社会で、どういう立場で生きているのかしっかり考えろとせまられているようだった。
 このガヴィアを導くのが『ギフト』にでてきたオレックの詩だ。『ギフト』『ヴォイス』で語られたことと響きあいながらガヴィアは自分がもつ力の生かし方を考えていく。いまこの物語に出会えたことを、これからじっくり考えたいと思う。

◆アーシュラ・K・ル=グウィン読了本感想
ヴォイス 西のはての年代記II』

ギフト 西のはての年代記I』

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2008.10.11

神々の黄昏

読破ページ数【20】

『ぼくとルークの一週間と一日』 ダイアナ・ウィン・ジョーンズ作 大友香奈子訳 東京創元社(2008.08)

 両親をなくしたデイヴィッドは、寄宿学校にはいっている。しかし休暇になると大おじ一家のところに帰らなければならない。いつもはサマーキャンプやホリディキャンプの手配をしてくれて、それなりに楽しめた。ところが今回は休暇にはいる日付を大おじの息子のロナルドがまちがえていたせいで、何の手配もされていなかった。大おじ夫婦とロナルド夫婦に家政婦のミセス・サークスから小言をいわれつづけてすごす休暇なんていやだ。大おじたちは何かというと、デイヴィッドは面倒をみてもらえることに感謝しなければいけないという。ある日とうとうぶちきれたデイヴィッドは、大おじ一家を呪おうと、適当な呪文を唱えた。すると地面がゆれてルークと名のる男があらわれた。それから不思議なことがおこりだす。ルークって、いったい何者だろう?

 ジョーンズ初期の作品で、これまで翻訳されなかったのは北欧神話とクリケットが重要な要素で日本に馴染みがないからだったのでしょうか。とくに北欧神話を知らないと、クライマックスは意味がよくわからないかも。わたしの知識では一読しただけでは何か意味があるのはわかるけど、それがピンとこなくて欲求不満に(^^;)。ジョーンズの最後にぱたぱたとすべてがまわりだすところが堪能しきれなかった。
 それにしても北欧神話をモチーフにしながら、スーザン・プライスとはまったくちがいます。
 初期の作品だからか、すこし消化不良の感じもします。"The Game" ではギリシア神話をモチーフにしていて、やっかいな親類というところも似ていますが、こちらのほうがうまく咀嚼されているかなぁと思いました。

◆ダイアナ・ウィン・ジョーンズ読了本一覧(感想)

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2008.09.16

天使の気高さ

読破ページ数【20】

『暗黒天使メストラール』クリフ・マクニッシュ作 金原瑞人・松山美保訳 理論社(2008.05)

 フレイアは8歳のときに天使に会った。以来もういちど天使に会いたくて、常道を逸した行動をつづけるうちに、9歳のときに病院にいれられてしまう。母は幼いときになくしていたが、父の必死の看病で回復し、14歳のいまようやく家にもどって学校に通うようになった。
 学校でも人気者のエイミーに気にいられ、普通の生活を満喫していた。そんなとき、ふたたびフレイアの目の前に天使があらわれる。それは以前みた姿とはまったくちがう、羽も身体も黒い「暗黒天使」だった。

 マクニッシュは「魔法少女レイチェル」シリーズや「シルバーチャイルド」シリーズでも「守る子ども」たちを描いてきた。今回も「守る子ども」なのだが、これまでどこか「子ども」たちがその運命を即受け入れていたのに対して、フレイアはさまざまなことにゆれ動く。14歳の少女の友人やはじめてのデートといった普通の悩み、父や兄の悩みに気づいていくこと。そうしたことを悩みぬいて成長していく姿は読みごたえがある。とくにいじめの場面は苦しくて、何度も読む手がとまってしまった(夏休み前から読みはじめたのに、1か月以上もかかってしまった)。それでも最後まで読めてよかったと思う。

「ここには気高さがある」(9ページ)

 気高さゆえに、「守る」ことができるのだろうか。人を傷つけるのは人間だけど、人を救うのも人間であることがひしひしと伝わってくる幻想的なファンタジー。とくにお父さんと兄のルークの「気高さ」が印象的。このふたりに守られていたからこそ、フレイアも成長できたのだろう。

 天使の造形も読みどころのひとつだろう。でも真っ黒になったのも、真の姿にもちゃんと理由があるところがマクニッシュらしい。

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2008.04.08

杖のひとふりで

読破ページ数【30】

おせっかいなゴッドマザー シャンナ・スウェンドソン著 今泉敦子訳 東京創元社(2008.03)

▽シリーズものなので、既刊のネタバレ含みます▽

◆「(株)魔法製作所」シリーズ感想
ニューヨークの魔法使い
赤い靴の誘惑

 というわけで3巻。ようやく初デートとあいなったケイティ。待ち合わせ場所にいくとそこにあらわれたのは、どうみても時代遅れのフェアリーゴッドマザー。これまでの人生でいちばん必要ないと思われるいま、なぜあらわれる。彼とは問題なくうまくいっているからと、心配無用とことわったけれど、会社のほうでも問題がおこってデートはお流れ。

 なぜか間の悪いタイミングでつきまとうフェアリーゴッドマザーに、前作ではっきりした敵は、あらたな資金源を得て新しい戦略でせめてくる。ケイティに悩みはつきません。
 いやぁ、やっぱりおもしろい! 「眠り姫タイプかシンデレラタイプか」なんて、おもわずにやにやしてしまいます。現代のニューヨークに魔法をうまく共存させていて無理がない。これまでの伏線もうまくつかってあって、うまいなあと思います。脇役も魅力的でいろいろな読み方ができるところもいいです。

 そして最後に転機が……。ああ、はやく続編を~~、と叫びそうになりました。

 新学期がはじまったばかりで、もうへろへろですが、これでなんとか4月を乗り切れそうなくらいエネルギーチャージできました。

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